無花果グループでの学校生活におけるキーワードのひとつが、「ホンモノとの出会い」です。
さまざまなお仕事に携わりながら人生を送っている大人たちとの出会いを通して、自分の世界を広げていく。
生徒は、関わった大人たちと異なるお仕事を選ぶこともありますが、学校生活での体験はこれからの進路を決めるうえで大事な足がかりになります。
そして、どこかのタイミングで自分が進みたい方向を見つけた時、「実際にその道を選んだ大人に話を聞いてみよう」「前に会ったあの人に相談してみようかな」という選択肢が生まれます。
このような選択肢こそ、「ホンモノとの出会い」がもたらす深い学びのひとつです。
無花果のまわりには素敵な大人たちがたくさんいます。
経営者、クリエイター、職人、アーティスト…。
何を考えて暮らし、どんな決断をしてきたのか。
そして、これからどこに向かっていこうとしているのか。
無花果シロでは、無花果グループを応援してくださっている素敵な大人たち、一人ひとりの分厚い人生を紐解いていきます。
こちらの記事では、無花果高等学園二年生の小林 竜樹がレザーブランドを手掛ける株式会社ユハク代表取締役(インタビュー当時)の仲垣友博さんにお話を伺いました。
【仲垣 友博(なかがき・ともひろ)】
yuhaku CBO(最高ブランディング責任者)。1976年生まれ、福井県出身。元株式会社ユハク代表。財布や鞄などの革製品を主に扱うレザーブランドであるyuhakuを運営していた。2025年11月を持って代表から退き、CBO(最高ブランディング責任者)に。

yuhakuが大切にする、「色で魅せる」ものづくり
──本日はよろしくお願いします。まず、仲垣さんについて教えてください。
仲垣さん:私は「yuhaku」というブランドを立ち上げました。革に手作業でグラデーションを入れた「色で魅せる」革製品を手掛けています。代表とはいえ「代表取り乱し役」って感じなんですけど(笑)


私はクリエイター的な人間なので、経営者には正直向いていないかもしれませんが…。その中で経営もやりながら、17年もブランドを続けさせていただいています。
──yuhakuは、どんなブランドなんですか?
仲垣さん:革のブランドといってもいろいろなものがあります。弊社は、製造過程から販売まで、最初から最後までをやっているというところが特徴ですね。
正確には、皮を革にし腐敗しないようにする「革をなめす」工程はやっていないのですが、革を染色するところから入っています。そこから裁断し、縫製をし、販売までほとんど全てを社内で行っています。商品企画やデザインについても外部に一切出さず、自社で全てが完結する一気通貫のブランドです。
よくあるケースとしては外部に制作を任せて、製品の企画だけを主にやるブランドも多いですね。でも、うちは素材のこだわりをしっかり伝えたいと思い、特に革の染色に力を入れています。
もともと、私は絵画を学んでいたので、そこで培った手法を応用して染色技術を研究しました。通常、革の染色というのは大量の水の中に染料を入れ、その中に革を漬け込んで色をつけます。その方法だと、革全体が均一な色にしかならないのです。そこで、絵画を学んだ経験から「革にも表情を持たせたい」と考え、手作業で革にグラデーションをつける技術をつくっていきました。yuhakuは、一つの革製品の中にアートを入れたような、アートを持ち歩く感覚で使っていただけることをコンセプトに、ものづくりをしているブランドです。
──わたし自身、あまり普段の生活で革製品に馴染みがありませんでした。yuhakuさんのことを最初に知った時は、財布一個に50,000円も!? と、衝撃がありました。でも販売サイトを覗くうちに商品に込められた凄味が伝わってきて「本当に素敵なものだからこの価格でも払うのをいとわない人が沢山いるんだ…!」と感動しました!
仲垣さん:ありがとうございます。ものに対する魅力の感じ方、お金の使い方は人それぞれ違いがありますよね。お客さまの中にも、最初は革製品に興味がなかったという人も多くいらっしゃいます。
ふつうの革製品にはない魅力を、うちの商品は持ってると思っています。一般的に、財布は実用品であって、デザインや色に強くこだわる感覚は生活していて中々出てこないと思います。
でも、うちの商品の特徴は、普段デザインについて意識しない人たちにも、一目で「なんだこれ?」と目に留まるようなつくりをしていることです。それを感じてくれたのであれば嬉しいです。
──yuhakuさんの販売サイトは、商品のコンセプトが写真や文章でまっすぐ伝わってきます。良質な革製品に詳しくなくても、一目で「これはスゴイかも!」って思わせてくれるのが素敵ですよね。見ていて、すごく楽しいです。
仲垣さん:それは嬉しい!真逆の感想を持たれてしまったらどうしようと思っていたんですが、そういうふうに受け取ってもらえてよかったです。
グラデーションという見せ方に辿り着くまで──「yuhakuといえば○○」を作り上げる──
──yuhakuさんの革製品におけるこだわりは「染色」にあるのですね。仲垣さんが手ごたえを感じていたデザインに、ともに製作をしている方たちも「イイじゃん!」と共感してくれたことで、ブランドが成立しているという形なのでしょうか?
仲垣さん:まさにそうです。もともと、私は靴のデザインに携わっていました。そこから、革製品のブランドをつくるにあたり、最初はやっぱり個性的なデザインを売りにしたいと考えていました。グラデーションを特徴にした製品は、あくまで商品群の一部として構成していたのですが、百貨店のバイヤーさんが注文してくれるのは、染色によってグラデーションが入った商品だけだったんです。
自分からグラデーション一本に決めたというより、周りが「このグラデーション、他にない商品だよね!」と押し上げてくれた感じです。
「もっと、デザインで魅せたいんだけどなぁ」なんて気持ちもありましたが、ブランドが成長して社員も増えていく中で、特に大切なのは「商品を見ればすぐどこのブランドかわかる」という共通認識なんです。「ブランド=◯◯」という特色なしに、ブランドは成立しませんから。
イメージをつくり上げるためにも、グラデーションを売りにした商品以外はだんだん排除していきました。今は、「yuhaku=グラデーション」です。ゆくゆくは、見た人も「グラデーション=yuhaku」と連想するところまで持っていきたいと考えています。
──「グラデーションという表現そのものが、なんだかyuhakuっぽいね」と感じてもらうことが一つの到達点。

仲垣さん:そうですね。
──はじめは、デザイン性の強みを押し出した商品を中心につくるつもりだったとおっしゃっていましたが、ブランドのあり方を変えながら進んでいくことに対して、葛藤はありましたか?
仲垣さん:ありましたね。時には自分の我を押し殺すことが必要ですが、やはり何か個性的なデザインの要素を入れたくなる自分もいました。でも、グラデーションで色をしっかりと表現するには、キャンバスとなるフラットな面がなければいけないためすごく悩みました。
「何が求められているのか?」という点に照準を定め、お客様に喜んでもらえることが一番だと思い、舵を切りました。
経営者というより職人というより、アーティスト。
──グラデーションのみならず、さまざまな表現を用いたものづくりに関心を持っているんですね。
仲垣さん:正直、飽き性なので、色々なものを見たくなるんです(笑)デザインをするときに、他のブランドの財布や鞄を見るよりも、建築を見たり車のパーツを見たり、全然ちがうものからのひらめきでものづくりをすることが多いです。そうすると、意外と飽きないので。
自分の性格をわかっているので、どうすれば飽きずに続けていけるかを模索しながらデザインしています。
── 一見、製品そのものからは全く離れているようなところでインスピレーションを得るからこそ、多様なデザインにたどり着けるんですね。
仲垣さん:そうですね。自分の頭の中の引き出しがすごく多くなっています。たとえば、百貨店さんから別注品を作ってもらいたいって話をいただいた時、すぐに引き出しを開けて、その場でアイデアを出すことができます。いろいろなデザインを吸収してきたことは、自分の中での大きな蓄えになっているなと思います。
──ちなみに、お仕事をしていない時間や自由な時間は何をして過ごしていますか?
仲垣さん:休日は、ちょっと遠出するのが好きです。ドライブして美術館や神社に行ったり、温泉に入ったりしますね。ゆっくりする時間と、インプットする時間を設けています。電車での移動中は、できるだけインプットを増やすためにSNSを見て、情報を自分の中で蓄える時間にしています。
──職人さんって、なんだか全然休んでいないようなイメージがあったので、ちょっと意外です。仲垣さんがご自身のことを職人だと思っているのか、はたまた経営者だと思っているのかは、まだまだ掴めていないのですが…! 休みの日の過ごし方も、普段のお仕事につながる蓄えになっていくんですね。
仲垣さん:休日って、ものすごく重要だと思っています。
あと、自分は職人ではないんですよ。コツコツ同じものをつくることができないタイプでして。アイデアを「生み出す」側なので、クリエイターやアーティストに近いですね。
経営者としては不出来な人間なので、自分が「経営者」だとも正直思っていないです。まあ、うちの社員からは「自覚を持ってよ!」って言われちゃうと思いますが(笑)
もちろん、経営もすごく勉強して臨んでいるのですが、長年経営をされている方と比較したときには劣っていると思います。自分を構成している知識や得意分野、人物像を客観視した時、圧倒的にクリエイティブ的な資質が大きいので。
──一緒にお仕事をしている人が沢山いる中で、仲垣さんが社長であるということには、どのような意味があると思いますか?
仲垣さん:やっぱり、創業者が社長であることは、大きな意味があるのかなと思っています。いまのyuhakuをつくっている染色技術も、私が研究してつくったものなので。ほとんどの製品のデザインに自分が携わっていて、プロダクトが自分から生み出されていることについては、社長でなくとも良いにしても「代表」であることは必要なのかなと思っています。
──仲垣さんあってのyuhakuであることを表す。その象徴としての代表ということですね。
仲垣さん:そうですね。そういう意味合いで受け取ってもらえたら嬉しいです。
高校生だった頃の仲垣さん
──学生時代のお話についてもお聞きしたいです。高校生の頃って、どのように過ごしていましたか?
仲垣さん :中学高校、全くもってやる気のない男でしたね。なんでそうなったかというと、中学の時にすごくいじめを受けていたんです。同級生からハブられることもありましたけど、先輩から休み時間のたびに呼び出されて、今の時代だったらちょっとありえないようないじめを受けていました。ところで、『ビー・バップ・ハイスクール』って知ってますか?
──分からないです…!
仲垣さん:ですよね(笑)そういう、昔の不良漫画があるんです。その時代ぐらいのいじめを受けていました。一番ひどいところでいうと…、和式の大便器があるじゃないですか。そこに顔を突っ込まれて、水を流されて、溺れかける…。そういう経験をして、もう高校では目立たないようにいきたいなと思っていました。
いかに目立たないようにするか、それが全てのやる気をなくすことにつながってしまったんです。それから、勉強も特にしない、スポーツも特にしない。そんな学生時代を送っていました。なので、高校時代の自分を知っている人からすると、いまは「何がどうなったの?」と思われるくらいの変貌をしているんです。
同じように、いじめを受けている子たちってすごく多いと思うんですよね。自分みたいな体験をしてる人もいれば、もっとひどいこともあるかもしれない。
今考えると、高校生や中学生の時ってすごく浅はかな考えしか持っていないし、何か行動しても、大きなインパクトを残せることってあまりないじゃないですか。学生時代って持ってる力がすごく少ないんですよね。でも、そこでやる気をなくすんじゃなく「ここから先の未来ってすごく大きいんだよ!」ということを、伝えていきたいと思っています。
世の中に出て、自分の力で何かをやっていくと、人と人の人脈がつながって大きなことができるときもあります。無花果の学園長である中藤さんも、若くしてこれだけのことをやっていることを、皆さん目の当たりにしていると思います。
何か自分で行動を起こせば、しっかりと形になっていくんだと思って、今からでも挑戦していっていいと思うんですよね。
私も、学生時代にSNSがあれば、そっちでもっと頑張れたのかなあと思うときがあります。今の世の中をうまく利用して、やりたいことを形にしていってもらえるとすごくいいなと思いますね。
──先ほど、高校時代の自分を知ってる人からすると別人のようになったと仰っていましたよね。実際に仲垣さんご自身の中で、「今の自分と昔の自分は地続きで同じ人間だ」という感覚はありますか?
仲垣さん:もちろんあります。別人というわけでは全くないので。高校時代もふつふつと「何かやってやりたいな」って気持ちは心のどこかにあったんですよ。けど、その気持ちを出せる場がなかった。それで、ずっと何もしていなかったんですよ。
ただ、大学に入ってから自分で絵を描くようになって、今のブランドについてもだんだんと形にしてきました。その経緯については端折らせてもらうんですが、何かをやりたい気持ちは昔からずっと心に持っていました。
──大学生の時は建築関係の学科に所属していたと聞きました。進学先を選ぶにあたり、興味を抱くきっかけはありましたか?
仲垣さん:実は、特に建築に興味があったわけじゃないんです。大学進学しろよ、と親から言われて、それならものづくりに関わりたいなあと。小さな時から思っていたことでした。どうせなら、大きなものをつくってみたい、とても浅はかな考えで建築を選びました。
でも、大学受験にあたって全く何も調べていなかったんです。なので、ひとくちに建築を学ぶ大学といっても、デザイン的なことを学ぶ学校なのか、それとも構造設計を中心に学ぶ学校なのかによって、内容が全然違うことを知りませんでした。
私は「まあ全部デザインみたいなもんだろう」と勝手に思っていました。でも、いざ入ってみたらやりたいこととは真逆だったんです。構造設計ばっかりで、そちらにものすごく力を入れている学校だったので。「これは大失敗だったな」と感じて、中退してしまいました。
ただ、高校時代に一番影響を受けた友達がいました。高校三年間同じクラスだったんですが、ファッションが大好きな子でした。高校一年生の時からバイトのお金を全部洋服につぎ込むほど、超おしゃれさんだったんです。大学はどこ行くの?と聞くと「俺は美大を受けるんだ」って話をされました。
私の地元の福井県は、大学が二、三ぐらいしかないようなところだったんです。当時は、美術系の大学の存在すら知りませんでした。その話を聞いてから、ずっと美術の学校に行きたいと思っていました。自分で創作ができるところに、行きたいって気持ちがあったんです。
彼のその一言をずっと引きずっていたことが、中退に繋がりましたね。
案外、グレー。──色彩へのこだわりと革製品の魅力
──ひとつ、私の興味本位の質問をしていいですか?
仲垣さん:はい。
──仲垣さんの一番好きな色って、何ですか? あ、今当ててもいいですか? 青色なんじゃないかなと思ってるんですが…!
仲垣さん:それがですね、私が一番好きな色は、なんとグレーなんですよ!
──え、そうなんですか!?yuhakuって、あんなにブルー推しっぽいのに!
仲垣さん:そうなんです。グレーは、パッと見で鮮やかな色ではないですよね。江戸時代、庶民が身につける着物に対して制限が出たことがありました。階級が高い人しか、色物の服を着れないような時代がありました。その中で、庶民の人はネズミ色と茶色しか着てはいけませんというお触れが出たんです。
でも、庶民の人も考えました。ネズミ色の中でもさまざまなネズミ色をつくったことから、「四十八茶百鼠」という言葉が生まれるほど、茶色とネズミ色には種類があります。その思想にも影響を受け、yuhakuのブランドカラーになっているんです。
他の色を引き立てる色でもあり、それ自体がすごく上品な色でもあって、先ほどのストーリーも相まって私もグレーが大好きです。
──自信満々に宣言して、外してしまいました(笑)
仲垣さん:いえいえ、うちのブランドを見ていたらブルーだと思うのも当たり前です。もちろん、ブルーも大好きですから。
──グレーの中にある繊細さ、色々な顔を見せられるところに惹かれるのですね。
仲垣さん:そうですね。ちなみに、小林くんは何色が好きですか?
──強いていうなら、ライトパープルが気に入っています。
仲垣さん:じゃあ、うちでもライトパープルを作らないと(笑)
――あまり、こういった色の革製品は見かけないです。
仲垣さん:なかなかないですね。どうしても、女性らしいイメージになってしまうのかな。でもうちだったら、男性に似合いやすい色味で作ることもできると思います。
──オーダーメイドで、お客さんの欲しいものに合わせて製品を作ることもよくあるんですか?
仲垣さん:要望があれば受けています。ただ、あまり公にはしていないんですよね。注文が来すぎると、うちのキャパが大変になってしまいます(笑)どうしても!という思いを持ってくださった方には、もちろん答えさせていただいています。
──たしかにオーダーメイドの注文が増えるとすごく忙しくなりそうですね…!
仲垣さん:でも、オーダーメイドでわがままを聞くことはすごく面白いんです。つくる側として発見にもなります。今まで避けていたこと、ちょっとめんどくさいことを注文されると、新しい需要や使いやすいデザインの発見に繋がります。
いろんな気づきがあるので、今後もオーダーメイドでの制作はやっていきたいですね。
──オーダーが、新しい領域に挑戦するきっかけを与えてくれるんですね。
仲垣さん:それはものすごく大きな意味になってると思います。
──ちなみに、仲垣さん自ら製作に携わる機会もよくあるんですか?
仲垣さん:製作はここ数年手を出せていないです。ただ、染色の方は必ず指導に行き、研究開発についてはほとんど自分が率先してやっています。
──お仕事の中で、大変だなと感じる瞬間はありますか?
仲垣さん:大変なのは自分が苦手な領域、主にマネジメントですね。逆に、ものづくりに関することは正直大変だと思ったことがないです。困難を乗り越えたときの達成感の方をより強く感じられますから。
──魂の形が、アーティストなんですね。
仲垣さん:やっぱり、自分に向いてることを仕事にできることは一番の幸せなんじゃないかなと思います。
──「もしも」の自分を想像したときに、「いまの仕事以外でも、同じぐらいやる気を持って生きていけるだろうな」という実感はありますか?
仲垣さん:もちろん、クリエイティブをする仕事であれば何でも生きがいにできるんじゃないかな。
──では、革製品にしかない魅力はなんだと思いますか?
仲垣さん:他の素材ではあまり見られない経年変化を感じられること。あと、触ったときの質感ですね。たとえば、木や金属だったら感触は硬いですが、革製品には柔らかさがありながらも布とは違った滑らかさを持っています。革でしか味わうことのない手触り感が、一番の魅力だと思っています。
革に特化した理由としては、私の革を見極める能力が優れていたこともその一つです。
少し触って匂いを嗅ぐだけで、どういうなめしをしているか、どういうつくりをしているかがわかってしまうんです。そういう、ちょっとした特殊能力があるからこそ革に従事しているのかなと思います。たまたま、向いていましたね。
──革を見極める能力。ちなみに革って、それぞれどんなところに違いが出るんですか?
仲垣さん:言葉だけで伝えるのは難しいですが、まずは、動物によって大きく違います。牛なのか羊なのか豚なのか?ここで大きく違いがあります。一般的に流通している革となると牛の皮がほとんどですが、牛革の中でもなめし方が違ったり、柔らかくしたり固くしたり、いろんな手法があるんです。
ひとくちに牛革といっても千差万別で、全く別物です。私は、それぞれのプロダクトをつくるうえで最適なものを見つけ出すことが得意なんです。
──製作の際に革を選ぶのは、仲垣さんの仕事なんですね。革の奥深さの一端に触れられました。
仲垣さん:先ほどもお話したように、かなり奥深い業界なので、アパレル業界の中でも革は少し特殊な分野だともいわれています。
──特殊、というと何が違うんですか?
仲垣さん:専門的な知識がないと、いいものづくりができないんです。デザインが仕上がったとしても、革とマッチングしないといいプロダクトになってくれない。ブランドの中でも、革が一番の肝になりますね。
──たとえば、「便利なデザインの財布」「コンパクトな鞄」といわれると商品の強みがすごくわかりやすいと思うんですが「手触りがなめらか」「色味が素敵」といった強みは、個人の感性に依存した定量化しにくい特徴のように感じてしまいます。この点についてはどのように意識されていますか?
仲垣さん:本当に難しいところですよね。プロダクトをつくるにあたって、商品の特色を「どう伝えていくのか」が一番の課題です。今は商品をECサイトで買う機会が多い世の中です。でも、ネット上で手触りなんて絶対にわからないですし、なんとなく使い勝手がいいのかな?という想像で選ぶしかありません。色だって画像だけでもある程度伝わるとしても、うちの商品については、実際にものを見てもらった方が絶対にいい!と言い切れるんです。
写真の雰囲気や質感が気に入っても、届いてみたら全く印象が違って、ガッカリしてしまう商品もよくありますよね。でも、うちの商品の場合は、実物を開けたら写真よりずっと綺麗だった!という感想がすごく多いです。
そういったクチコミがお客さんの間でもっと広まってくれれば、うちの強みである「質感」にようやく到達できると思います。
──自社ブランドの製品の特長が、お客さんに向けてちゃんと伝わるように工夫することが大切なんですね。
仲垣さん:そうですね。まだまだ、完璧にはできていないんですが…!
──「うちの商品は手触りが強みです」と宣伝されるよりも、友達が「この財布手触り良いんだよね」と言ってくれる方が、買いたくなるときもありますよね。
仲垣さん:できるなら、そういう形まで持って行きたいです。ただ、うちのお客様には、「自分だけが知ってるブランドにしたい」と思う人も多くて、なかなかオープンにしてくれないんです。そこはジレンマですね。
ジャパンブルーを世界へ──未来への展望とアート活動
──yuhakuさんや仲垣さん自身のことについて、未来への展望はありますか?
仲垣さん:まずyuhakuとしては、この染色技術を、未来の日本の伝統工芸にまで昇華させたいです。
ブランドカラーはグレーだと先ほど伝えたものの、プロダクトのメインはブルーなので、「ジャパンブルー」という風な呼び方でいろんなブランドを募って、日本のブルーはすごくいい色なんだと。日本の職人がつくるブルーに対して、もっと興味を持ってもらえるような未来を作りたいなと考えています。
そして私自身、今でもアート活動も続けていますが、来年にはニューヨークで個展をやることを目標としています。どのようにニューヨークで魅せていくことができるか、ちょっと楽しみでしょうがないです。
──ブルーはやっぱり、yuhakuさんの中で特別な色なんですか?
仲垣さん:うちのブルーを再現できる他の会社はいない、と言い切れるぐらい、ブルーについての染色技法には特徴があります。ジャパンブルーの所以については、江戸時代に外国人の方が日本に来たとき、藍で染められたお店の暖簾を見て「ジャパンブルー!」と最初に言った、という説があるんです。そういったことからも、やはり青や藍は日本人のDNAに染み込んでいるのかな。
──青色は、日本という土地からしても特別な意味を持つ色なんですね。仲垣さん個人でやっているアート活動というのは、絵画のことですか?
仲垣さん:自分は絵画と彫刻をやります。それで、彫刻に関してはいま面白いことをやっています。昔の日本家屋は入り口に土間があって、小上がりに続いていたんですけど、そこには必ず衝立(ついたて)が置かれていました。でも、今ではそういった日本家屋は数を減らしてきていて、衝立ても不要になって廃棄されてしまっています。衝立には、悪い気が入ってくることを防ぐ風水的な意味があります。衝立が捨てられていく現状がもったいないという意識もあって衝立を現代の建築で生かすことができないか考えました。
今、日本では大きな家を使うことは中々難しいので、海外の建築の中でアートとして衝立を昇華させていくことにしました。
木の塊などを、自分で彫刻して形を変えて、そこにペイントを施します。言葉だけだと全く伝わらないと思うので、お見せしますね。


──おお!カッコイイ!
仲垣さん:2mぐらいあります。もともとはフラットな面が多かったんですが、炎に見立てて彫刻して、グラデーションのペイントを施しました。日本画に用いられる岩絵具って顔料があるんですけど、それを樹脂に混ぜて七層ほどに重ねて、光が当たるところで色が変わるような仕掛けをつくっています。こちらは二年前かな?積水ハウスさんとのコラボで、ちょっと豪華な建築物を一棟貸していただいて、作品を展示しました。
──すごい!聞いているだけでワクワクするお話ですし、仲垣さん自身も気持ちを高めながらつくっている感じが伝わってきます。
仲垣さん:つくっているときは、無心でやっていますね。
──このような製作は、いつもお仕事のあとで取り組んでいるのですか?
仲垣さん:この展示のときは、一ヶ月ほど会社に行ったり行かなかったりです。ある程度の時間を創作に費やして、仕事をしながらも家でずっと彫っていましたね。全力投球の心構えでした。
──今まで、さまざまなお仕事や活動を積み重ねてきた仲垣さんが抱く新たな夢の一つが、彫刻なんですね。すごく素敵なお話です。
仲垣さん:やっぱり、夢をずっと追っていきたいなと思います。一つ何か叶っても、またそれ以上の夢を持って挑戦していきます。そうしているからこそ、楽しいので。
制限を外して、やりたいことに全力で──学生へのメッセージ
──では最後に、通信制高校やフリースクールに通う子どもたちへ向けたメッセージをいただけますか?
仲垣さん:日々の生活を送る中で、色々なものに自分自身で「制限をかけて」しまうことがあると思います。その制限を一度外してみて、本当に自分のやりたいことに集中して取り組んでいると、必ず何かしら成果が出るはずです。
絶対に成功する、とは言い切れないんですが、ただただやったことの意味が生まれてくると思います。私は、やって後悔したことは一つもないです。失敗したことは全て学びだと思っているので!
「やらなかった後悔」を残さないで、一度やってみてうまくいかなかったことも工夫しながら再挑戦して、仮説を立てて検証を繰り返す。そうしているうちに、自分自身の向き不向きが見えてくるんですよね。
ものすごくやりたいことがあって、それが自分にとって向いていることだったらいいんですが、残念ながらそうじゃないこともありえます。
その時「ただ残念だった」と諦めるのではなく「今度はこうしてみよう」と試行錯誤してみて欲しいです。そうすると、絶対に自分に向いていることがわかってくるので、そこに全力投球してあげるとみんなが喜んでくれたり、その能力を求められたりします。
誰かからの求めに応じて、自分の力を最大限に生かすことにはすごく意味があって、それに応えている自分自身も楽しいんです。
そうやって人生を動かしていくと、自分にとって一番やりたかったことが、だんだん自分にとって一番向いていることになっていきます。
今、学生の子たちには、未来しかないんですよ。私は今年で49歳、もう来年は50歳なんです。でも、まだまだやれると思っている。「若い子には負けないぞ」ぐらいの気持ちでいるんですけど、それ以上に今やれる環境を持った学生たちがいます。SNSがあったり、無花果で学ぶ機会があったりして。
学校では得られない学びもたくさんあると思うので、それを生かしながら、自分が興味を持ったことには全部食らいついて吸収していく。突き詰めていくと、本当にいい人生を切り開けると思うので、ぜひともチャレンジをしてもらいたいです。
──自分のやりたいことに挑戦し続けることで、誰かの期待に応えられる。すごくいい表現だと思います…!素敵なお言葉をありがとうございます。

(了)
冒頭にも記載しましたが、仲垣さんは2025年11月を持ってyuhakuの代表から退き、現在はCBO(最高ブランディング責任者)の職に就いています。
無花果シロでは、仲垣さんが代表として最後の機会にインタビューをさせていただくことができました。
また、yuhakuの公式ECサイトではお財布、バッグ、小物などこだわりの革を用いた素敵な商品の購入が可能です。
正直、ウィンドウショッピングをしているだけでも楽しくなるほど、見ごたえたっぷりです。どのアイテムも、画像で見ているだけなのに超カッコイイ!
現物も見に行ってみたくなりますね…!
この機会にぜひ、アクセスしてみてください!
yuhaku
https://yuhaku.co.jp
無花果グループWEBページ
https://1ziku.jp

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